MAGAZINE

やさしい人に還る服

日本の服づくりの、いまとこれから〜01(後編)

tennen / テンネンは「自然分解100%、リサイクル、オーガニック、日本製」をコンセプトに、天然繊維の循環する服づくりを通じて「ユーザー、生産者、自然、そして私たち自身、みんながハッピーに!」を目指すブランドです。
私たちの天然繊維の服はざっくり、糸づくり→編み立て→染色→縫製の工程を経て、1枚の服として完成します。
今回は、“編み立て”の工程でご協力いただいている、和歌山県はオカザキニットの3代目、岡崎社長に、服にまつわる過去、現在、そして未来についてざっくばらんにお話をうかがいました。オカザキニットは国内の天然繊維での丸編み編み立て(=ニッティング、=カットソー)を担う第一人者です。

今回はその後編です。

前編を未読の方はこちら!

洋服のサステナビリティと
繊維のリサイクル

t
日本製で、環境問題やサステナビリティにアプローチしているアパレルっていうのが非常に少ない。知っての通り、海外のアウトドアメーカーではあるんですけど。
まだまだ数量はね、生産者のみなさんに貢献できてない部分がありますが……。

o
良いんじゃないですか、それで(笑)。

t
そう言っていただけると(笑)。
生産体制、販売体制も含めてこの2年間をずっとやり繰りしていて、ようやく整ってきた感もあるので、ここで一気にチャレンジしていく体制をつくっていこうかなと話をしていまして、今年はある程度結果というのも同時に考えていこうという方向性でいます。

o
とにかく走らないことには。ダメだったら立ち止まってね、戻ったらいいんですよ。結果を恐れてたら、なにもできない。

t
私ね、いちばん最初に社長にお会いして、「販売先は?」って質問をされたときに、「まずは直営店です」って答えたら、「もっと生産者の立場を考えなくちゃいけない」ってアドバイスをいただいて。僕はそのときすごくガツンときたんですよ。
tennen / テンネンは、「私たちは生産者のみなさんとウィン・ウィンになりたい」と言っておきながら、私たちサイドの都合で販売先もコントロールしていこうって話で進めてしまっていたので、「ちょっと話が違うよね、僕らが言ってたことって……」っていうのでガツンときた。

o
先ほど、「小ロット? それでいい」って言ったのは、例えばあるアウトドアウエアブランドのTシャツを取っ掛かりからやらせてもらってるけど、最初なんてロットになんかならなかったよ。

t
そうですか!

o
百貨店やショップもひっくるめて、彼らも売り場づくりはそんなに贅沢にやってないですよ。シンプルに展開するほうが長く続いて、しかも拡大しやすい。
プラス、基本的に料理しやすい商材。エンドユーザーがコーディネートしやすいというのが基本ですね。トータルでやるんだったら別だけど、コーディネートの一部という展開なら、なおさらです。

t
なるほど。つまりデザインもシンプルであって、素材の良さにこだわっていたりとか、そういうものづくりっていうことですよね?

o
シンプルであるのと同時に、tennen / テンネンのキーワードでもある「サステナビリティ」とかですよね。
幸いなことに、いま洋服のリサイクルというものに対して注目度が高くなってきています。これこそまさにシンプルなキーワードで、いまの時代を反映したものづくりにつながっていくと思うんですよ。
服のリサイクルの話をすると、基本的にアパレルとか小売店が考えてるのは、「古着をリサイクルしよう」という考え方なんだけども、「色の入った繊維をどう扱うか?」っていうのが、衣料をリサイクルする際に非常にネックになってくるところなんです。
これまでは、例えば車の内装のクッション材など見えない部分に使うので、ある程度の色の分別で大丈夫だった。ところが衣料にする場合には、色についてはかなり細かく分別しなきゃいかんので、そのコストを考えたらとてもじゃないけど合わない。だから、いま行なわれているのが、一度すべて脱色するという方法です。素材がわかれば、それに対して使われている染料はわかる訳だから、脱色の技術で化学的にその染料分だけ抜いてしまったら、本来のローホワイト=生成りに戻るじゃないかと。そういった繊維を糸に戻すのは簡単です。

t
リサイクルに関しては、私たちもいまお付き合いの深い紡績会社さんで糸にしてもらってて、ホールガーメント製品のテスト段階まで上がってきています。
最初は、コットン100%のTシャツだったりYシャツだったり、白いものを集めて反毛(生地を切り刻んだりしてワタに戻すこと)して糸に戻してもらったんです。
その過程でいちばんネックになったのは、合繊の縫い糸。紡績段階でその合繊がどうしても邪魔をするという壁にぶち当たって。で、「100%リサイクルのコットンは無理だ。細い糸が引けない」ってなって、合繊をギリギリところまで取り除いた上で、バージンコットンをプラスして細い糸を完成させたっていう経緯なんですよ。
おっしゃるように非常にむずしかったですね。そこがやり甲斐でもあるんですけど。

o
忘れてはいけないのは、最終的にね、コストの問題が絡んでくるんです。だからまあ、贅沢もひっくるめて、すごいものをつくり上げたとしても、そのコストがバージンコットンの糸よりもべらぼうにアップしてしまったら、あまり意味がないんですよね。この辺のバランスですよね。
だから100%にこだわらなくてもいいと思うし、そのメッセージは伝わると思いますよ。

t
国内の各ブランドさんは、もうかなりリサイクルに関しての動きはされているんですか?

o
旗を振ったりとか、やろうとしてるのは商社ですよ。アパレルそのものは、「どこかが持ってきてくれれば、乗りましょか」という程度なんですよ。
「自分のところが仕掛人になってやろう!」っていう意欲のある、あるいはリスクを張ろうっていう姿勢のところは1社もない。

t
ドキドキしてきちゃいましたね(笑)。うちはその後者です。

o 世界規模のプルミエールビジョンっていうテキスタイル展示会や、ミラノ・ウニカなどの素材市での最近のキーワードっていうのは、全部サステナビリティになってきたりしてるんですよね。ただ、そういう商品が日本で売れているかといえば、まだまだですよ。
だってオーガニックコットンひとつをとっても、世に出て何年経っているか、みなさんご存知ないと思うんですけど、もう50年近いんですよ! で、やっと、いまなんです。(※2020年1月現在)
私自身がオーガニックコットンと初めて知り合ったのが45年前で、いちばん最初に取り上げたのがKOSHINO JUNKOさんでした。それから約50年です。
だから、ある程度成熟するまでには時間がかかると言うことです。それまで辛抱できるか、ってところなんですよ。
どっかの真似をするだけだったら短期間にいけるんだけどね。おそらく、このtennen / テンネンというブランドをやろうとした場合、あの程度の年数は覚悟の上でやらないと。

t
我慢が必要ですね。

o
私が言いたいのは、どういう形であれ、販売力=売るという力がないと、いくらいいコンセプトをつくっていいものづくりをやっても、結局持続可能ではない。で、売るためには当然自分の力も大事だけども、売ってくれる、いわゆる他力的な力、これをどう利活用させてもらうか。だからやっぱり売ってくれるかたが興味を持ってくれるものでなくてはならないのと同時に、利益勘定ができるような仕組みを考えてあげることが大切です。
ものづくりは、『もの』+『つくり』の組み合わせ。『もの』と『つくり』は別物なんですね。企画と販売をバランスよく考えてあげること。続けていくには、これがいちばん大事なんです。

服のみらい
tennen / テンネンのみらい

t
服って、昔からつくりかたがあまり変わらずにこれまできてる気がするんですけど、将来的にどうなっていくのでしょうか?

o
従来の方法論で、正直あと何年もつかな? と思ってますよ。

t
ドキッ……!

o
糸、編み、染色、縫製……、将来的に必要なくなると思う。 3Dプリンター、知ってますよね? もうシューズの世界があれに変わっていってます。
アメリカの大学生が3年前にポリエステルでワンピースをつくりましたね。最初は硬化しすぎて座ったら割れたとか。それから柔らかいポリエステルが開発できたって言ってね。これができてくると、絵型をスキャニングして、3Dプリンターで立体をつくって、着色やモチーフ的なものはインクジェットプリンターでやれば、既存の過程は一切いらない。
大半のものが、プロでなくてもものづくりできる時代になってしまったね。プロとアマチュアの垣根がなくなったと言っていいぐらいだから、いいとか悪いとかっていうその基準さえなくなってきてしまった。

t
個人でつくれちゃうレベルですよね?

t
もう目の前ですよ。縫製工場も、染色工場も、紡績・合繊メーカーも要らない。われわれニッターも。
アパレルという業態も、それこそデザイン会社、企画会社みたいになってしまうんじゃないか? スキャニング用の絵型とかを提供するような。それで十分でしょう?

t
でも残るには残りますよね、きっと。さきほど社長がおっしゃったように、多様化ということでいくと。

o
裸じゃ、生活できないからね。

t
その残ったなかで、「じゃあ、何ができるか?」っていうのも、これからの大きなテーマのひとつですよね。
では、これからのtennen / テンネンに関して、期待してくださる部分って何かあったりしますか?

o
期待するのは勝手だけれども、期待通りにいかないのが世の常でしょう? 逆に貴社がどういう風にしたいかに対して、こっちが共感するか、しないかでしょう? 

t
おっしゃる通りで(笑)。
スタンスとしては、これまでの「自然分解100%、リサイクル、オーガニック、日本製」というのを崩さずに地道にやっていこうと思っているんですが。社長にもご協力いただきながら……。

o
tennen / テンネンは、ものづくりに対して「何を大事にしていて、何を重視しなければいかんのか」というのを、もう一回原点に戻って振り返った方がいいんじゃないかなと思う。いま若干焦りがあるんじゃないかな? まだまだ足踏み期間中って理解して、原料あるいはテキスタイルをもう一回時間をかけてじっくり見直してもいいんじゃない?

t
最初に社長が、「非常に時間がかかる」といったことですよね?

o
そう。とはいえ、火がついたら一気ですよ。そのときにドタバタしても始まらないし、そこで失敗したらあとがない。そのための体制を、いまから時間を掛けてじっくりと固めたほうがいいと思いますよ。
幸いなことに、いまは世の中決してよくないから、余計にじっくり構えてやりやすいと思いますよ。過去を振り返ったら分かるように、そういう時代っていうのは何年も続いた試しはないからね。いいときにしろ、悪いときにしろ。振り返ったら「あっという間だったね」って言うのがほとんどだから。総じて、成功してる人たちは100%ポジティブ・シンキングですよ。
面白いものでね、「人生、周回遅れ」ってよくいうように、先頭走ってるのと最後尾を走ってるのと、周回を重ねていくと見てる人はわかんなくなってくるらしいんですよ。だったら周回遅れもいいねって(笑)。周回遅れの人生を送ろうと思ったら、ものすごく余裕が生まれる。逆に先頭切って走ろうと思ったら、ありとあらゆる圧に対抗していかなければいけない、ということらしいです。
そう考えると、tennen / テンネンというブランドひとつ捉えても、本当に自分らが何をしたいか、ですよ。まずそれを絞って、それから広めていったらいいんじゃないですか? いっぺんに「あれも、これも」っていうんじゃ、収拾がつかなくなっちゃう。

それと、世の中で意外と「相手の立場」っていう言葉を使うけれども、「相手の立場が自分の立場」ってイコールで考えてる企業とか人とかって、少ないですよね。「相手がマイナス、でも自分がプラスだからいいじゃない」っていう人がほとんどでしょう。でも、自分がマイナスになったときに、どんな感情を持つかっていうのと同じこと。
洋服づくりに置き換えたときに、糸があって、編みがあって、加工があって、例えば加工の段階で不良品になったとしても、「どこの責任だ?」って責任追求はするけれど、「みんなでお互いに分担で責任を負おうよ」という発想は持たないでしょう?
うちの場合は、例えば糸をつくってもらって、編めないとか、編んだけれどもキズが出やすいとかで製品にならない場合も、こちらが100%依頼したときは一応お支払いするんです。やってもらった行為に対してはお金を払うんですよ。それをするから少々危険な、あるいは「ヤバいな」と思うようなことでも、相手はいつもトライしてくれるんです。
それを、「これはお前のとこの責任だ」と言わせて、「うちは引き取らないよ」、「お金は払わないよ」って、全部自分のところを中心にしてしまうと、本当に自分のところだけですべて回るようなビジネスやものづくりの仕組みであればそれでいいんだけれども、そうじゃないよね。やっぱり、つくる力が優っていても原料がないとつくれないし、つくったものを販売してくれる人がいないと消化できない。繊維業界は垂直スタイルとかいって、川上、川中、川下とか分けたりね、下請け的な言われ方もするけれど、基本はイコールなんです。
関西の言葉でこういうものがあるんですけど、「売ってやる」って言われたら「買ってやる」ってなるし、「買わせてもらっています」って言ったら、「売らせてもらっています」ってなる。 この言葉のニュアンスがものすごく大事なんですよ。それが、すべて態度に表れているんですね。

t
大変勉強になります。 あくまでもテンネンのスタイルとしては、前からも申し上げている通り、もっと「ウィン・ウィンで」っていうのは常に頭のなかに持っていますので、今後ともお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いします!