tennenの
循環する服づくり

天然繊維の服を纏う。ほつれたら直してまた纏う。
裁断クズやボロになった服は、もう一度繊維に戻して編みあげる。
それでも着られなくなったら、土に還して、コットンの種を蒔く。
そうしてまた、糸を紡ぐ。

空と海とを交互にめぐる水のように、
人肌と野生のあいだを悠久にめぐり続ける。

tennen の服を纏うということ。
それはつまり、自然を纏うということ。

自然分解
Natural decomposition

服づくりから
アクションを起こす

 tennenのコンセプトのひとつ目は、ちょっと聞き慣れないこの言葉。「ゴミにならず、土に還る服であること」を指しています。しかも、「100%、すべて還せる」を目指しています。なぜか? いちばんの理由は、プラスティックのように自然に対してゴミになってしまうことを避けられる服をつくりたいと思ったからです。
 tennenのチームは偶然にも山や海を愛する人たちが集まりました。日常的に接しているその場所は、本能的に美しいと感じます。ときに激しく怖ろしくもあるけれど、その懐の深さに、すっとココロのざわつきが包み込まれること度々です。一方で、拾うのを諦めたくなるほどの僕らがつくり続けてきた便利の代償が街からあふれ、塵が積もるように海をおおってしまいました。
 いま、世界中の多くの人たちや企業が変化を恐れず、その現状を解決しようと新しい行動を起こしています。私たちも、人間は自然の一部だと身をもって感じているから、これからの服づくりはできる限り自然と相性のいい素材だけを使っていきたいのです。
 だから、tennenの服は天然素材。生地も、ボタンも、ネームも、縫い糸さえも。制約をつけることで、コットンやウールなど、生物の進化の奇跡とも言える機能的特長を存分に引き出した、肌触り、着心地ともに申し分ない素材が生まれてきています。そして、石油由来の合繊が生まれる以前の、長きに渡って重宝されてきた天然素材の過去の技術を単に振り返るのではなく、現代の日本の技術と発想、クリエイティビティで、気持ち良く丈夫な服を新たにつくり出していこう。そんなチャレンジ精神もtennenの服には宿っています。

新しいリサイクルシステム
New recycling system

アルミ缶70%、洋服20%の
常識を変えていく

新しいリサイクルシステム

 原料調達から製品まで。たとえ、それがどんなにシンプルな服でも、完成までには本当にたくさんの人の手がかかり、またたくさんのエネルギーが使われています。にもかかわらず、洋服のリサイクル率はたったの20%余り。ちなみに飲料などのアルミ缶は約70%、ペットボトルは約85%です。
 この低いリサイクル率の原因のひとつは、混紡の生地や縫い糸、ボタンやファスナーなど洋服が分別しにくい構造になっていること。そして、過剰生産によって洋服が余ることで、その価値自体も下がり、使い捨てOKという考えがなんとなく蔓延してしまっているのも否定できないことです。
 だからtennenは、まずはコットン製品から、縫い糸も含めた単一素材でリサイクルを前提にした服づくりにチャレンジし始めています。
 現在は、洋服のリサイクル工場と一緒に、そこで出る古着から実験的にリサイクル糸を紡ぐ開発をしている真っ只中です。そこでわかったことは、リサイクルコットンを繊維に戻すとき、どうしても繊維の長さがまちまちになってしまい、再び糸に戻し直すときに強度がでないこと。それを解決するために、繊維長の長いヴァージンコットンと組み合わせて紡績(生地のための糸づくり)してみては? という仮説を設けて実験を続けています。
 ペットボトルからのリサイクル合繊繊維を使ったアウトドアウェアやボードショーツは少しずつ普及してきました。次はtennenが、天然繊維でウェアのリサイクルを推し進めていくことで、洋服にもっと多様性が生まれ、服のつくり方や服への意識がもう一度見直されるきっかけになれれば、そう願っています。

オーガニック
organic

自然にも人にも
やさしいということ

 天然繊維での服づくりをさかのぼると、そのスタートは農業や畜産など、自然と関わるパートからすべてが始まるということに気がつきます。
 なかでも心が痛くなるような事実があるのは、世界のコットン栽培。現在、世界の農業のなかでもっとも農薬類が使われている栽培品目であり、生産地では多くの健康被害、また地下水の汚染など、ハードな環境のもと働き、暮らす人々がたくさんいる上で、その供給が成り立っていることをお伝えしておかなければなりません。
 tennenが掲げるコンセプトのベースに流れている精神、それは「ユーザー、生産者、私たち、そして自然。みんながハッピーに」という思いです。ですから、コットンをはじめ、そのほかヘンプやシルクなどの天然繊維も、正しい形で栽培、生産されたものを調べてチョイスしています。そして、私たちの夢は、自分たちが育てたコットンで製品をつくり、みなさまにお届けすること……。
 私たち自身、洋服に関わる素材の成り立ちを知るべきだという考えから、千葉・鴨川の山のなかで休耕田をお借りして、また茨城・水戸の社員が耕す畑でコットンの有機栽培に挑戦して、今年で2年目。わからないことばかりで試行錯誤の連続ですが、まぶしい太陽のもと、土をいじり、野生を感じ、農業の苦労を体験し、自分で育てる大切さを覚え、収穫の喜びを知ることに積極的です。
 それは、都会のオフィスのなかだけでは得られない貴重な触れ合いが、そこにあることを知っているからです。 

日本製
Made in japan

グローバルから
ローカルへ

日本製

 ものづくりにおける“Made in Japan”は、自他国ともに認める私たちの誇りです。しかしアパレル業界も他聞に漏れず、低コストや安い労働力を求めての海外生産や、国内の現場の人員不足や後継者不足で、つくれる場所が日に日に減っている現状もあります。
 海外生産を見てみると、現場は経済成長が著しい東・東南アジア圏から、より安価な労働力を求めて南アジアやアフリカ圏へと流れているといいますが、その先は袋小路。そこには持続可能性が見えてきません。一方、国内の現場へ目を向けてみると、そこには日本人のより良いものを生み出そうとする職人気質や、技術への創意工夫のマインドが、まだまだあります。
 服づくりにおける膨大なエネルギー消費を抑え、遠い国で私たちの知らない誰かが涙を飲みながらつくられるような行き過ぎた海外生産体制に依存しないためには、これまで自国で培ってきた技術や産業を受け継ぎ、フェアな雇用を維持しながら、ローカルでものづくりを進めていくのが理想的な気がしています。そういった生産現場の透明性や、ものづくりの魅力を広くお伝えするために、私たちはカメラとペンを片手に定期的に工場を訪れ、現場で体験した出来事をウェブサイトで発信しています。
 tennenが空想で生み出した服づくりの循環。その工程が現実としてすべて廻り始めた暁には、そのモデルを日本以外の場所でもローカライズできる仕組みがつくれると信じています。