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木から生まれたTシャツを、木の染料で染める

天然染料なのに色落ちしにくい tennen草木染め

8月30日よりMakuakeにてクラウドファンディングを開始した「天撚Tシャツ/和紙」。これは和紙100%の糸で編み立てられたさらりとした着心地が魅力のTシャツで、様々な天然素材でTシャツを作っているtennenの中でも、他にはない機能的で上品な一枚となっています。

樹木をパルプ状に加工し、紙を作り、さらにスリットして糸を作るという日本の技術で作られたTシャツは、独特のシャリ感と高級感があります。また、吸水性や防臭性を持っているので肌の上に直接着るTシャツにもぴったり。tennenが自信を持ってオススメできる新作です。

その商品の詳細はMakuakeのプロジェクトページをご覧いただくとして、ここでは「天撚Tシャツ/和紙」で新採用した、「tennen草木染め」についてご紹介しようと思います。

サスティナブルな染色方法を求めて

「循環する服作り」をブランドの核としているtennenは、できる限り環境に負荷がかからない製品作りを心がけています。そのこだわりは、天然素材の中でもオーガニック素材やトレーサビリティのある素材、リサイクル素材を使うことに始まり、縫製糸にもコットンを使うこと、品質表示タグもコットンを使うことなど、多岐に渡ります。

そんな取り組みの一環の中で、染色に関しても私たちは様々な取り組みを行ってきました。一部化学染料に頼らざるを得ない製品もありますが、これまでに古来より伝わる柿渋染めや藍染め、草木染めをしたアパレルも展開し、今回のTシャツには草木染めより染色堅牢度が高い、「tennen草木染め」を採用しました。

はじめはよくても、長期間着ているうちにボロボロになって着る機会が減ってしまっては、結局サスティナブルとはいえません。頻繁に着用されて洗濯されるTシャツだからこそ、なるべく風合いよく長く楽しんでいただきたい。そんな思いから、新しい選択肢にたどり着きました。

私たちが今回取り入れた「tennen草木染め」は、草木と化学を配合した新しい染色方法。まずはその説明に入る前に衣類の染料について簡単に説明しましょう。

染料には大きく2種類あり、まず一つ目は、現在最も多くの衣類染色に用いられている化学染料。これは石油などを元にした合成化学物質の染料で、化学反応によって繊維に色が固着。染料の粒子が細かいため、鮮やかで均一な色味に仕上がります。

そしてもう一方の従来の草木染めは、その名の通り植物、鉱物などから抽出した天然素材を元にした染料。媒染剤を使って染料を生地に重ねて色を固着させることで染色していきます。これは自然な色合いや微妙な色の変化を作れるのが特徴ですが、日常生活での使用や光により退色してしまうため、一般的に合成染料に比べて堅牢度に劣るという欠点があります。

木の染料でTシャツをダークネイビーに染める

今回のダークネイビーの「天撚Tシャツ/和紙」に使用したのは、アメリカの先住民族マヤ族が使用していた伝統的な染料でもあるログウッド。

このログウッドとは、中南米原産で、赤から黒まで染めることができ、沢山の色素を表現できる魔法の樹と言われています。ジ・ヒドロピランと呼ばれる色素を抽出し、真っ赤な色を持ち血液を浄化する力があったと言われていました。また、光を総て持っている処から、お守りの木、光を持って来てくれる木として大切にされています。

イギリスのネルソン提督が世界の海を制したときに着ていたマリンジャケットもこれで染められ、フランスのナポレオンが着ていたフロックコートもこの色素で染められていたそう。カリブ海の風と太陽をたくさん浴びたログウッドは、大航海をへて世界中へ旅に出る勇気をくれる植物です。

天撚Tシャツ/和紙は一見するとなんの変哲もないTシャツに見えるかもしれませんが、元々は木だった和紙素材のTシャツを、木の染料で染め上げるというチャレンジングな一枚なんです。

この「tennen草木染め」の染色方法は、媒染剤を使用しない代わりに、繊維と染料を繋ぐイオン結合の糊材としてタンパク質を使用。特殊な方法で抽出したログウッドの染料に微量の化学染料(色素・堅牢度の補強、植物色素の不安定さを補助するため)を組み込むことで、天然原料をベースのナチュラルな発色を持ちつつ、堅牢度を高めることに成功しています。

大まかな染色工程としては、①ログウッドの樹皮を煮込むなどして染料を精製。②染色したいもの(今回は製品染めなのでTシャツ)をタンパク質の糊剤に漬け込み。③お湯に染料を溶かし、糊のついたTシャツを染色。この時にイオン結合が行われます。④色止めとしてクエン酸を加えたら染色終了。

従来の草木染めでは染料がお湯に残ってしまいますが、草木染料の粒子を吸着する特殊なタンパク質の糊の成分によって、お湯に溶かした染料の粒子をTシャツの繊維が吸着します。その証拠に、染料を溶かしたお湯からTシャツを出して水分を絞ると。透明なお湯が滴り落ちてきました。

従来の草木染めにはない、ナチュラルな色合い

天然のものに色の奥行きが感じられる理由は、人間の目で見える波長以外の色素も含んでいるためだと考えられています。その点、tennen草木染めによって染色された繊維は、従来の草木染めに比べより多くの色素を吸着します。そして、それらの色素が乱反射することにより揺らぎが生まれ、私たちの目にはナチュラルかつ鮮やかな色味に映るというワケなんです。

従来の草木染めに重厚感を感じるのは、実は草木の成分がたくさん重なり顔料化して光を吸収してしまうから。その点でいえばよりナチュラルな色味を作り出せるのがtennen草木染めの特徴です。化学染料には出せない天然染料の色合いを、ぜひ皆さんに感じ取っていただければ嬉しいです。

正直な話、tennen草木染めでは化学染色より数倍コストがかかってしまうので、製品価格に転嫁せざるを得ません。これが無染色の白Tとダークネイビーのカラーで価格差が生まれてしまっている理由でもありますが、自然由来のやさしい発色が出る染料を使いながら、堅牢度を高め、これまでにない色を引き出しているということにバリューを感じていただけると幸いです。

私たちtennenでは、今回のログウッド以外にも別の植物を使って、今後異なる製品を染色してみようと企画しています。自然を感じる色合いを、天然繊維の服にのせて……。