MAGAZINE

循環する服

100%リサイクルの糸づくり

このマガジンページの最初のほうでご紹介した、繊維のリサイクル事業。第一線で取り組む横浜・ナカノ株式会社さんのご協力のもと、試作分として100kg分の白いコットン素材の古着を集めてもらい、反毛(ワタの状態)に戻してもらうため、フィリピンにあるナカノさんの自社工場で作業をしてもらいました。そして去る12月の頭に、これまたtennenオリジナルの糸をいつも紡いでくださっているパートナー、大阪・大正紡績さんで、いままでになかった100%完全リサイクル糸をつくるための試作実験を行なってきたので、そちらをレポートします!

世界と日本の繊維産業

工場に向かう前、今回の糸づくりをご担当くださる開発部の森田さん、営業部の藤野さんより、世界と日本の繊維産業のいろいろ、教えてもらいました。

「現在における日本の紡績生産量は、トータルで年間約28万錘です。この錘(すい)というのは、紡績の際に使う糸巻きのことで、紡績の生産量の単位として用いられます。現在の中国で、年間30万錘を生産する工場がたくさん存在していることを思えば、世界、それに日本の紡績業の規模がなんとなくわかると思います。ちなみに、わたしたち大正紡績の生産量は、そのなかで1万錘ちょっとといったところでしょうか。
そして、その中国さえも、原料になるコットン自体の生産はよりコスト安なアフリカに頼っています。スーダンやジンバブエ、ウガンダ、そして有名なところだとエジプトのコットンなんかがあります。実際、良質なものも多いんです。
日本の紡績の良さ、それはやっぱりわたしたち日本人の気質に因ります。真摯さ、職人魂、思い入れ、ものづくりの深さ、追求の仕方などなど。日本人は、ものづくりには焦らず、時間をかけますよね。早く仕上げて売ればいいものも、『もう1週間寝かせて、さらに美味しく』っていう文化の土壌がありますね。
日本にも和綿と呼ばれるこの国由来のコットンがあるのですが、繊維長が短かったりで、そのコットンのみを用いると10~12の太番手の太い糸しかできないので、昔から布団の中綿なんかに使われてきました。現代なら、長い繊維長のものとブレンドして、和綿づかいの糸として紡いでみてもおもしろいかもしれませんね」

はじめての100%完全リサイクル糸開発に向けて

今回初めてトライするリサイクル糸。やっぱり10番手くらいの太めの糸が適切なんじゃないかって予想しています。だから、太めの糸でもできるウエア、たとえばホールガーメントのニットなんてどうだろう? とか、ものづくりの現場は本当にワクワクするし、クリエイティブ。見る工程すべてからインスピレーションを得られます。

ボロ布のベールが脱がされ、ワタに還ったコットンが自分たちの目の前に露わになりました。「お~!」。その場は軽い興奮に包まれます。完全にマニアックです笑。ただのコットン繊維の塊ですが、私たちにとっては大切な第一歩の踏み出すための貴重なボロ繊維です。
今回のリサイクル原料は、全部で100kg。それを6:4に分け、いちばん最初の原料をほぐす混打綿機内で違う工程を経させて、ゴミの除去でき具合を比較するところから糸の試作は始まります。コットン繊維をセットする混打綿機のライン上にはブラックライトがあって、そこに手でつかんだコットン繊維を当てると、反応して光り輝く繊維があるのがわかります。これが、コットンではない化学繊維の糸クズで、だいたいの服の縫い糸に使われていたもの。これをできるだけ除去したいというのが、われわれの希望です。
服づくりにおいて、縫い糸を綿糸にするという選択もあるのですが、実際過去に取り組んでみたところ、着ているうちに縫い糸が切れてほつれが出てきてしまうという現実がありました。一着すべてを天然素材でまかなおうとしたときの大きなハードルです。

最初の60kgは、コットン繊維をほぐす工程を2度経させたのちゴミを除去し、次の工程に進むバージョン。あとの40kgは、バージンコットンと同じ工程を経させます。トータルで、歩留まり良くロスが少ないほう、ゴミが良く取り除けるほうの工程を採用していく予定です。
機械のスイッチがオンになると、ラインに並べたコットン繊維の塊がどんどん機械に飲み込まれ、ほぐされ、エアーで次々に流され、まるで流れる雲海のように運ばれていきます。
いよいよ実験がスタートしました!

コットンの含有量に差が出た!

混打綿機から出てきたコットン繊維は、最後にもう一度ゴミ除去がなされ、ラップと呼ばれる板状にロールされ、次のカード(梳綿・りゅうめん)機の工程に進みます。このラップの状態では、まだどちらのバージョンが理想に近いかわかりません。

次のカード機とは、巻き取った板状のコットン繊維を細い櫛に通して梳(と)かし、糸の前段階である紐状の繊維の束にする工程。その繊維束はスライバーと呼ばれ、それらをさらに束にし、引き伸ばし、撚(よ)っていくことで、一本の細く長く丈夫な糸をつくっていきます。その第一段階で、ここでもゴミの除去が行なわれます。
混打綿機で別の工程を経られて巻き取られたラップを、2台のカード機にそれぞれセットしてスタートです。機械下部から排出される繊維クズを目視すると、40kgのバージンコットンと同じ工程を経たラップのほうがたくさんゴミを除去できていそうな気配が。そして、カード機の櫛部分を通って生まれたスライバーを引き抜き、見比べてみると、明らかに繊維束の色みに差を見ることができました! 40kgのほうが、生成りっぽい色みをしているんです。「この色み、明らかにコットン量が多い証拠ですね」と開発部の森田さん。最終的に、化学繊維の糸クズを完全に除去することはむずかしく、カード機の段階で細い繊維に梳かされ、コットンとミックスされてしまいますが、またひと味違ったオリジナルの糸に仕上がりそうな予感です。

このあとは、スライバーを束ねて細く引っ張る練条、繊維束をさらに細く引っ張り平行度を上げる粗紡、撚りをかけて糸として完成させる精紡まで行なっていきますが、その日はここまで。
どんな特徴や風合いのオリジナル糸に仕上がるのか? また、その糸でどんな製品ができあがるのか? 自分たちもワクワクしています。
このtennenオリジナル・リサイクル糸の行方、乞うご期待です!