MAGAZINE

循環する服

繊維リサイクルの現場に潜入!

わたしたちテンネンは、「ゴミを出さない、生まない、服づくり」をいちばんの目標に掲げて、リサイクルを前提とした服づくりにフォーカスしています。その仕組みのなかで、ともにこのチャレンジに足並みを揃えてくれている仲間のひとつが、繊維のリサイクル事業を80年以上も続けていらっしゃる、横浜市のナカノ株式会社さんです。
第2回目の今回は、自治体から集められた私たちのタンスの古着が、どんな行程を経て選別され、利用されていくのか。ナカノさんが拠点を置くフィリピンの自社工場に船便で運ばれる前の、横浜工場に潜入! ちゃんと服のリサイクルしよー!

1. まずは粗選別。

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僕たちが自治体に出した古着が、この山(!)。ナカノさんが自治体から買い上げたものです。「こんなにあるの!」とちょっとビビりましたが、ナカノのご担当・藤田さん曰く、「いまはちょうどいちばん少ない時期なんです。こんなもんじゃないですよー」……と。3月と8月は閑散期だということ。読者のみなさん、まずはしっかり手持ちの洋服、着倒してくださいませ!
……というわけで、集められた古着の山にはいろんな程度のものが入っているので、まずはその粗選別作業です。ここでは、リサイクルできないような状態のものを取り除いていきます。濡れているもの、極度の汚れがあるものはリサイクルできません。「なぜ、濡れているだけでダメなの」? それは、海運のために梱包した際、その周りにある状態のいい古着までをもカビさせてしまうためなんだそう……。だから、私たちも自治体に出す際は、濡れた状態のものは出さないこと。また雨の日に出さないことを徹底しましょう。基本的に、次の人がそのまま着られる状態の古着を集荷してもらいましょう。

2.国内で流通させる中古衣料をピックアップ。

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さっきの初段階で粗選別された古着が、1Fよりベルトコンベアを伝って2Fへ運ばれて来ました。まず古着屋さんが古着を仕入れるスペースがあります。古着屋さんはナカノさんにアポを取り、ラインに立って、好きな古着をピックアップしていき、購入します。
そう。まずは国内で循環させることが環境負荷も低くてグッド! 企業秘密の部分もあるので撮影はNGです。

3. 次に、国内でしかつくれない反毛用衣料をピックアップ。

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古着屋さんのコーナーを過ぎると、次にナカノの自社選別行程に入っていきます。古着の用途の3本柱である「中古衣料」「工業用ウェス」「反毛(繊維ワタに還す)」のうち、反毛にするための衣料をここでピックアップしていきます。これは、海外に反毛処理できる繊維工場がないため、日本国内でないとつくれません。
ウール、コットンなど、品質表示を見ながら素材で分けて、もう一度繊維ワタに戻します。ウールなどはまた毛糸に紡がれ、セーターに戻っていたりしていますが、主には自動車の部材か建築資材に変わっていきます。
例えば、コットン系は吸音性があるので振動やノイズに強いワタが、またウール系は難燃性があるので熱に強いワタになるなど、同じ車の部材に利用するにしても、繊維の持つ特徴に応じて選別する意味があるんです。
そして、着物類は古物屋さんが仕入れていきます。出回る古着物のなかでシルク素材はわずかで、ほぼウール素材のものなんだそう。近年では、インバウンドのお土産ニーズで羽織なんかを仕入れていかれる業者さんも多いのだとか。 なかには、ぬいぐるみなんかも流れてくるのですが、ぬいぐるみはぬいぐるみでひとまとめにされて船でフィリピンに運ばれます。

4. 5~600kgに圧縮梱包され、フィリピンへ。

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2Fのラインを流れてなおピックアップされなかったものは、穴から1Fに落ち、フロアに貯まります。これらをフォークリフトですくってコンプレッサー内に運び込み、太い針金でがっちりサイコロ状に圧縮梱包されます。一個のサイコロで5~600kg、カッチカチです。これだけで相当量の糸に還るそう。
これらをまとめてコンテナで運び込み、フィリピンの工場にて約200人くらいの自社工員で細かく分別。フィリピンの工場がハブとなり、中古衣料として第三国にさらに輸出されたり、無駄なく工業用ウェスとして生まれ変わったりしているのです。

いかがでしたでしょうか? 僕ら自身もテンネンを始めるまで繊維リサイクルのことはほとんど知りませんでした。世の中の現状として、自治体がリサイクル品として古着を回収している割合は3割程度、あとは燃えるゴミとして集められてしまっているケースが多いのだそう。そういう自治体も、ゴミステーションには出せないけれども、定期的に廃品回収みたいな形で大きな場所を設けて集める日時を設けていたり、また、送料は負担してもらう形になってしまうのですが、ナカノさんに直接送付というのも受け付けています。
新生活や衣替えの時期、手放す衣料があったら、焼却ゴミとして捨てる前にもう一回、その行く先を考えてもらえたら嬉しいな~と、テンネンは思っています。

前半はこちら 「本当の服のリサイクルって、なんだ!?」